作品の舞台であるジョーカー太陽星団で開発された最強の戦闘兵器。通常人型をしており、大きさは肩高15メートル前後。光をエネルギーに変換して天文学的な出力を発する外燃機関「イレーザーエンジン」を動力源とする。
主兵装は刀剣・槍・棍・斧など近接戦用の武器である。これはMHが非常に強力な戦闘兵器であり、他の対象にはほぼ無敵で、自ずと戦闘は対MH戦を主眼としているからである。レーザーやミサイルなども騎体各所に装備されているが、MHは防御も優れており、飛び道具はほぼ無効であるため、主に牽制またはMH以外の駆逐・掃討に用いられる。あまりにも強力すぎることから、条約で禁じられている作中での最強の武器バスターランチャーを装備する騎体もある。
活動範囲も地上から空中、水中、宇宙にまで至る万能戦闘兵器である。しかし戦闘は戦術上ほとんどが地上で行われる。光速移動(劇中では「テレポート」とも表現される)、つまり瞬間移動も可能となっている。しかし光速移動には多大なエネルギーを必要とし、自らのエネルギーで行うとその直後は行動不能になることが多く、戦闘時の使用は実用的ではない。
平均的な人間を遥かに超えた反応速度をもつ人間、騎士(ヘッドライナー)の動きをトレースすることから、目視や誘導でも攻撃を当てることは容易ではない。また偶然当たったとしても、優れた強度と自己修復能力が備わった有機珪素(ネオキチン)の装甲は容易には破壊できない。また装甲自体に記憶された形状に自己修復する能力が備わっており、破壊は瞬時に大規模に行う必要がある。そのためMHには基本的にMHでしか対抗できない。しかしその一方で、転倒すると自重で破損してしまうという脆弱さも併せ持っている。
この様に、MHは非常に高性能だが、それに比例して操縦者にも非常に高い能力や衝撃に耐えられる身体を要求するため、普通の人間は操縦することができない。動かすには、「騎士(ヘッドライナー)」と呼ばれる特別な能力を持った者と、「ファティマ」と呼ばれる専用の情報処理能力を持った人造人間を必要とする。
騎士
MHの操縦者。ヘッドライナーとも呼ばれる。かつてのAD世紀時代の「超帝國」で遺伝子操作等により戦闘を目的に作られた人間。騎士の能力発現は劣勢遺伝であり、現在では全ての人々にその遺伝子が行き渡っている一方で太古から連綿とした血統を保っている王族・貴族には強力な騎士が高確率で発現する。民間からも生まれることがあるが、稀である。普通の人間をはるかに超える驚異的な身体能力を持つ。基本的にMHの動作は搭乗した騎士の動きのトレースである。
ファティマ
MHが強力となったことで騎士が単独で操縦を行うことが困難になったことから、操縦の補佐として情報処理用に開発された人造人間。MHの動作衝撃に耐えられるように、騎士に近い身体能力を持つ。出力調整、索敵、火器管制等を行い、騎士がMHの操縦に専念できるようになった。これによりMHはより高い能力を持つことになった。
騎士の肢体とMHとは機械的に接続されており、操作におけるタイムロスをゼロにする事で騎士の反応速度を活かすことが出来る。またMH側の挙動も騎士にフィードバックされるが、騎士にダメージを与える様な強い損傷や衝撃などは自動的に伝達クラッチが切られる保護機能が設けられている。ただし稀に回避しきれず騎士自身が損傷を受ける事もある。
騎士の操縦は全身で行うため、騎士用コクピットは騎士の体格に合わせて作られている。別の騎士が搭乗するにはコクピットの入れ替えが必要となる。ファティマ・シートは、全てのファティマが一人の騎士の細胞から作られていることから共用が可能である。ファティマは騎士に近い強靭な肉体を持つうえ、美観的に劣るという理由からファティマ・シートに拘束具などは備わっていない[1]。コクピットは完全シールドになっており、ダイバーパワーでさえ通さない[2]。
構造は人間の背骨の様な竜骨と呼ばれるメインフレームに、イレーザーパワーで駆動される動力ピストンとインナーフレームが取り付き、その上を何重もの装甲が覆う構造となっている。その装甲や装備は戦闘を行う場所の環境や戦術に応じて変更され、同一のMHでも全く異なる姿で現れる事がある[3]。また騎士のコクピットは胸部の竜骨前方に、ファティマコクピットは竜骨の最登頂部、MHの頭部に収まっている。
MH自体には意志は存在しないが幼児程度の知能は備わっている。騎士やファティマを父や母として認知し、その行動に盲目的に追従する。基本的な行動パターンはプログラムされており、更に戦闘を繰り返すに従い実戦経験をメモリーしていく(実戦経験の無いMHは「ヴァージン(処女)」と呼ばれる)。しかしレッド・ミラージュにおいては眼にした物を全て破壊する強力な破壊本能がプログラムされており、騎士とファティマは暴走を抑える安全装置に過ぎない。
MHの設計・製作が行えるのは、メインフレームの設計段階でMH全体の完成像を把握し得る様な、特別な能力を持った人間に限られ、「マイト」と呼ばれている。MHの開発には数十年単位の年月を要し、複数のマイトやファティマ・マイトが関わる事もある。量産騎になるとαテスト騎、βテスト騎と試作を繰り返す事になる。また組み立て・調整もマイトに次ぐ能力が求められ、専門の技師「マイスター」と呼ばれる。どちらも星団では希少であり高い地位を得ている。
戦争におけるモーターヘッドの役割
ジョーカー星団での戦争は、土地や人民を手に入れる国家間交渉の一手段とされている。その為に被害を最小にする目的で戦争代理人として騎士、そしてMHが用いられて、艦隊戦など多大な被害が予想される作戦は行われない。その為に非常に強力な兵器を開発した。それがMHであり、その操縦者が騎士である。
作中では、コーラス軍の空中戦車に搭載された連射式の180mmガンランチャーが偶然命中した事で、ハグーダ軍のMHマグロウが撃墜されている。しかしこれはコーラス軍の空中戦車隊にとってはかなりの幸運であり、通常ならば10台の戦車での予測攻撃の上で5,000発の射撃をしても、MHにかすらせる事すらできない。この為、本来ならばMHは空中戦車の様な通常兵器を歯牙にもかけない。こうした圧倒的な力の差はMHと対峙した通常兵器は見逃されない限り撤退すらままならない[4]。
MHはMHでしか対抗できない存在であり、MH同士の戦闘は決戦となる。通常兵力同士の戦闘は敵勢力のMH配備数を把握するまでの時間稼ぎである。敵勢力よりも自勢力のMH数が上回ればMH戦に移ることで勝算が非常に高いものになるし、逆に下回ると自軍に特別強い騎士やMHがない限りは撤退が賢明となる。この判断に時間を要するとそれだけ一般兵士に被害が大きくなり、劇中で描かれる戦争には情報戦の側面がある。
テリーヌ レーション パドック コラール ランド ブリス しし唐 レッド ダラス バスタ クロノグ ティング ドライ フルカップ ゴッド ハイド カナン シダレ りつりん ひぼう チカフ ナーバス なかふら ヨゴリーノ 高菜 ドアボーイ フレナ ユズリハ 潮の香り ブラック やしゃ オリンピピ ヤラピン イスア スラム ミラージュ ビート ワイポ クローニ オゾンホ プラン シトラス やなだに テラピア セレクト バック カイドウ バルブトゥ シティ あきう
MHの存在意義は、戦死者の軽減はもちろん、戦火で土地や人民を損なうリスクを最小限に抑えて領地を手に入れられるという点にある。またそれ故に騎士は戦争の全権代理人である。ジョーカー星団では強力な能力から騎士は人権が大きく制約されているが、それと引き替えとして高い地位が与えられている。
権威の象徴としての役割
MHの操縦は簡易的な範囲であればファティマ単独でも可能であり、優れたファティマの場合は騎士抜きでのMH戦すら試みることができるが、MHの能力を引き出すまでには至らない。また、騎士ではない人間では戦闘行動による衝撃に耐えられない。この為、騎士ではない為政者がMHを所有するのは、自分の権力を誇示する為の虚飾としてであり、金銭等で騎士との縁戚関係になる事と共に行われる。
国家や騎士が所有する場合でも、MHには国家の威信を示す等の役割があり、式典専用の優美な装甲が作られる場合もある。MHが兵器であると同時に最高の美術品と言われる由縁である。式典用装甲は極めて脆弱な場合が多いが、名のある騎士やファティマの搭乗騎では、戦闘用装甲であっても装飾が行われていることが少なくない。
モーターヘッドの歴史
MHの前身は、AD世紀に生み出された戦闘マシン「マシンメサイア」(マーシンメースとも)である。ファティマを必要としないコントロール体系をもち、現在の騎士をはるかに凌駕する強力な「純血の騎士」との完全シンクロにより、その戦闘力は後のMHを上回るものであった。
星団暦に入りMHへの変化を経て、この兵器は変わらずジョーカーの最強兵器として君臨したが、科学技術の後退と、騎士の血の拡散により、戦闘力の点で以前より劣ることは否めないものとなった。しかし星団暦2310年に開発された有機コンピュータ「ファティマ」により、MHの概念は新たな時代へと突入する。すなわち騎士がMHの操縦に専念することが可能になったことで、当時としては画期的な戦闘力の向上を得たのである。
MHは「領地争い」という当時の星団の戦術ニーズに合致し、数々の騎士がこれを駆って剣技を磨いた。MHは「MHを倒す兵器」として特化され、洗練されていった。この戦術ニーズにおいては、大量破壊をもたらす兵装よりも、効率よく敵MHを戦闘不能としうる騎体特性が求められた。バスター砲で破壊し尽くされ、生産力を失った土地に、当時の王たちは高いコストを払ってまで手に入れる価値を見出さなかったのである。
そんな中、3007年、A.K.D.光皇(皇帝)天照・ディス・グランド・グリース・エイダス・フォースが発表したMH群は星団中の失笑をかうものであった。火炎放射器(インフェルノ・ナパーム)を装備したレッド・ミラージュ、バスター砲を持つナイト・オブ・ゴールド、そして標準の3倍以上の巨大な騎体をもつヤクト・ミラージュなどの「ミラージュ・マシン」。これらの騎体は、明らかに破壊のみを目的としたものであり、当時の戦術理論では全く意味をなさない兵器群だったのである。
しかし3159年、天照の星団侵攻が始まると失笑は恐怖の叫びに変わる事になる。「MHは対MH戦を行う兵器」という常識を完全に無視したミラージュMHは破壊と殺戮の限りを尽くし、遂には惑星カラミティ・ゴーダーズを消滅させる。一方、星団全体の資源は枯渇し、MHマイトの血筋は失われつつあった。人々は対抗するすべを持たず、星団はついに天照の手に落ちた。
のち、フィルモア・パルチザンをはじめとする勢力がA.K.D.を倒し、星団を解放する。しかしこのときも、両勢力ともに、兵器としては既存のMHを改良、あるいはそのまま使用したものがほとんどであった。
MHの技術はやがて完全に失われ、伝説化する。星団暦18000年代のジュノーでは、「緑色の悪魔」「火色の巨竜」といった童話中の比喩に、わずかな名残をとどめるのみであった。
デザイン
MHのデザインは、連載開始時にデザインが公開されたものについては、作者である永野護がメカニックデザイン・キャラクターデザインを手がけたアニメ『重戦機エルガイム』の架空の戦闘兵器「ヘビーメタル」を元にしている。ファイブスター物語の冒頭で、『エルガイム』に登場するバッシュを基にしたバッシュ・ザ・ブラックナイトと、ブラッド・テンプルを基にしたレッド・ミラージュとの戦闘が描かれ、エルガイムのファンを読者として惹きつけるための作者の演出である事が明かされている。
また、『エルガイム』のヘビーメタルのデザインを基にしていると言っても、劇中に登場しなかったものも多い。ブラッド・テンプル自体、公式設定資料集の表紙に描かれているものの『エルガイム』の劇中には一切登場しておらず、発掘されたブラッド・テンプルNo.3の頭部がエルガイムmk-IIの頭部に流用されたというのみである。また、ブラッド・テンプルがレッド・ミラージュとなるなどテンプル・シリーズはミラージュ・シリーズに置き換えられる一方、名称のみを継承した新たなデザインのテンプル・シリーズも登場している。
第4話終盤での星団暦4100年のパトラクシェ・ミラージュ(ナイト・オブ・ゴールドAT)とエンゲージSR.4(ジュノーンodk)との対決は、『エルガイム』最終回「ドリーマーズ・アゲン」でのエルガイムmk-IIとオージ(オリジナル・オージェ)の対決に対するオマージュである。
『エルガイム』においてはアニメーション動画用に省略されていたロボットの細部が、本作では妥協なく書き込まれ、同じ種類のモーターヘッドであっても「装甲換装」や「バージョンアップ」によって、多様なバリエーションを与えられている。
なお、連載開始時にデザインが公開された中では、ホワイト・ミラージュが唯一、『エルガイム』とは無関係である。ホワイト・ミラージュは没となった永野案のΖΖガンダムが基になっているが、その後、「ワイツ・ミラージュ」に改名される等の変遷を経て、現在では設定から外されている。
モーターヘッド模型
WAVE・海洋堂・ボークスなど模型製作・販売会社の各社が、レッド・ミラージュ等のガレージキットを発売している。また、2つのバスターランチャー砲(通称ツインタワー)を持つヤクトミラージュが1/100のサイズで発売された際は、20万円近くにもなる価格もさることながら、全長2m以上というサイズであった。
モーターヘッドの商品化に際してはガレージキットとしての発売が基本となっている。これは連載当時ガレージキットが盛り上がりを見せていた事と、原作者の永野護の心情(大手メーカーによる商品化に難色を示していた)からであるが、この姿勢は現在も継続されている。
作中でのMHの細かい描写は、モデラーや原型師に対する永野からの挑戦状ともいえる。前途のヤクトミラージュやLEDミラージュ インフェルノ・ナパーム装備などは、当初永野は「立体化は不可能」と豪語していたが、どちらも1/100スケールでの立体化が実現している。またボークスやWAVEはインジェクションキット(いわゆる普通のプラモデル)、海洋堂は塗装済み完成品のアクションフィギュアも発売している。
ガレージキットの様々な展示会において法人、個人問わず数多くのモーターヘッドの立体物が見られる。海洋堂のMH造形やWTMの原型で知られる谷明も、元々はアマチュアとしてMH造形をおこなっていたのを永野本人に見出された経緯を持っている。しかし現在アマチュアディーラーにおける版権承諾は、ワンダーフェスティバル内にて不定期に行われるFSSイベントのみとなっている。
近年では、LEDミラージュなどの半透明装甲の再現や、ボークスのマイティシリーズにおける、パール顔料を混入した上での着色済みの半透明装甲や、エッチングパーツを使用した多重構造の再現、カラーキャストやメタルなど複数のマテリアルの使用などといった新しい試みがなされている。さらにWAVEがKOGの金色の半透明装甲をRCベルグの得意とする『インサート成型』で再現されるなど、ある意味ではメカ系のガレージキット業界における最新の製法が生み出されているとも言える。
海洋堂は永野との関係悪化により既にFSS関連から撤退しており、現在定期的にモーターヘッドのガレージキットを発売しているのは、イベント限定商品は除くとボークスとWAVE、ワークショップキャストのみであり、そのどれもが基本的には直販での販売である。